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天地の神を祈ひつつ我れ待たむ
早来ませ君待たば苦しも

歌の意味
天地の神々に祈りながら、私はあなたを待っていよう。早くいらしてください、あなた。待っているのは苦しいから。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3682

詞書は前の歌に続き「肥前国松浦郡の狛島の亭に船泊まりする夜に、遥かに海浪を望みて、おのもおのも旅の心を慟みて作る歌七首」
 天地の神々に祈りながら待っていよう、早く帰って来てほしい、待つのは苦しいからと、旅立つ人に呼びかけた女性の歌である。左注に「右一首娘子」とあり、狛島の地で一行を迎えた土地の娘子の作とされる。宴の席に侍って旅人をもてなした遊行女婦の歌と考えられており、都で待つ妻たちの心を代わって歌うようなかたちで一行の旅情を慰めている。
 作者は左注に「娘子」とのみ記され、名は伝わらない。
 詞書によれば、肥前国松浦郡の狛島の亭に船を泊めた夜に、遥かに海の波を望み、それぞれが旅の悲しみを述べて作った七首の一つである。狛島は現在の佐賀県唐津市の神集島とされ、壱岐へ渡る前の港であった。

 初句「天地の」 天の神と地の神の意で、あらゆる神々を指す。
 二句「神を祈ひつつ」 「祈ふ」は神に祈り願う意、「つつ」は継続で、神々に祈りながらの意である。
 三句「我れ待たむ」 「む」は意志の助動詞で、私は待っていようの意。ここで切れる三句切れである。
 四句「早来ませ君」 「ませ」は尊敬の命令形で、早くいらしてください、あなたと呼びかけている。
 結句「待たば苦しも」 「待たば」は仮定条件、「も」は詠嘆で、待つのは苦しいからと、四句の願いの理由を添えて結ぶ。

こふ:神に祈り願う
出典
万葉集
前の歌
帰り来て見むと思ひし我が宿の 秋萩すすき散りにけむかも
次の歌
君を思ひ我が恋ひまくはあらたまの 立つ月ごとに避くる日もあらじ