秋の夜を長みにかあらむなぞここば
寐の寝らえぬもひとり寝ればか
- 歌の意味
-
秋の夜が長いからだろうか。どうしてこれほどまでに眠れないのか。それとも独りで寝ているからだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十五 遣新羅使人歌 3684
詞書は前の歌に続き「肥前国松浦郡の狛島の亭に船泊まりする夜に、遥かに海浪を望みて、おのもおのも旅の心を慟みて作る歌七首」
どうしてこれほど眠れないのか、秋の夜が長いからか、それとも独りで寝ているからかと、自らに問いかけた歌である。眠れない理由を秋の夜長に求めながら、本当の理由は妻のいない独り寝であることを最後に示しており、問いのかたちに妻への恋しさがにじんでいる。引津の亭で詠まれた本巻の第三千六百八十首「夜を長み寐の寝らえぬに」と同じ思いが、ここでは問いとして深められている。
詞書によれば、肥前国松浦郡の狛島の亭に船を泊めた夜に、遥かに海の波を望み、それぞれが旅の悲しみを述べて作った七首の一つである。狛島は現在の佐賀県唐津市の神集島とされ、壱岐へ渡る前の港であった。本歌には左注がなく、作者の名は記されていない。
初句「秋の夜を」 秋の夜がの意である。
二句「長みにかあらむ」 「長み」は形容詞「長し」の語幹に「み」がついた形、「か」は疑問で、長いからであろうかの意。ここで切れる二句切れである。
三句「なぞここば」 「なぞ」はどうして、「ここば」はこんなにもひどくの意である。
四句「寐の寝らえぬも」 眠ることができないのもの意で、本巻の第三千六百八十首などの「寐の寝らえぬ」と同じ表現である。
結句「ひとり寝ればか」 「か」は疑問で、独りで寝ているからだろうかと、二句と対になる問いで結ぶ。
い:眠り
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
君を思ひ我が恋ひまくはあらたまの 立つ月ごとに避くる日もあらじ
- 次の歌
-
足日女御船泊てけむ松浦の海 妹が待つべき月は経につつ