旅なれば思ひ絶えてもありつれど
家にある妹し思ひ悲しも
- 歌の意味
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旅の身なのだからと、思いを断ち切って過ごしてきたけれども、家にいる妻のことを思うと、やはり悲しい。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3686
詞書は前の歌に続き「肥前国松浦郡の狛島の亭に船泊まりする夜に、遥かに海浪を望みて、おのもおのも旅の心を慟みて作る歌七首」
旅の身だからと思いを断ち切って過ごしてきたが、家にいる妻を思うとやはり悲しいと詠んだ歌である。旅のつらさに耐えるために心を抑えてきた者が、ついに抑えきれなくなった思いを率直に吐露している。上の句の努力と下の句の嘆きとが逆接によって対比され、望郷の思いの強さが際立っている。
詞書によれば、肥前国松浦郡の狛島の亭に船を泊めた夜に、遥かに海の波を望み、それぞれが旅の悲しみを述べて作った七首の一つである。狛島は現在の佐賀県唐津市の神集島とされ、壱岐へ渡る前の港であった。本歌には左注がなく、作者の名は記されていない。
初句「旅なれば」 旅の身であるのでの意である。
二句「思ひ絶えても」 「思ひ絶ゆ」は思いを断ち切る、あきらめる意で、思いを断ち切ってもの意である。
三句「ありつれど」 「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形で、逆接の「ど」により、過ごしてきたけれどもと下へ転じる。
四句「家にある妹し」 「し」は強意の副助詞で、家にいる妻をの意である。
結句「思ひ悲しも」 思うと悲しいの意で、「も」は詠嘆である。
おもひたゆ:思いを断ち切る、あきらめる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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足日女御船泊てけむ松浦の海 妹が待つべき月は経につつ
- 次の歌
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あしひきの山飛び越ゆる雁がねは 都に行かば妹に逢ひて来ね