あしひきの山飛び越ゆる雁がねは
都に行かば妹に逢ひて来ね
- 歌の意味
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山を飛び越えていく雁よ、都に行ったなら、妻に逢って来ておくれ。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3687
詞書は前の歌に続き「肥前国松浦郡の狛島の亭に船泊まりする夜に、遥かに海浪を望みて、おのもおのも旅の心を慟みて作る歌七首」
山を越えて飛んでいく雁に、都に行ったら妻に逢って来てくれと頼んだ歌である。雁が便りを運ぶという考えを踏まえつつ、ここでは便りを託すにとどまらず、雁に妻に逢って来てほしいと願っている。引津の亭で詠まれた本巻の第三千六百七十六首の雁の使いの歌を受け、狛島での七首は雁への呼びかけで結ばれている。
詞書によれば、肥前国松浦郡の狛島の亭に船を泊めた夜に、遥かに海の波を望み、それぞれが旅の悲しみを述べて作った七首の一つである。狛島は現在の佐賀県唐津市の神集島とされ、壱岐へ渡る前の港であった。本歌には左注がなく、作者の名は記されていない。
初句「あしひきの」 「山」にかかる枕詞である。
二句「山飛び越ゆる」 山を飛び越えていくの意で、都の方へ渡っていく雁の姿である。
三句「雁がねは」 「雁がね」は雁のことで、ここで雁に呼びかけている。
四句「都に行かば」 都に行ったならばの意で、未然形に「ば」がついた仮定条件である。
結句「妹に逢ひて来ね」 「ね」は他に対する願望を表す終助詞で、妻に逢って来ておくれと雁に願って結ぶ。
あしひきの:「山」にかかる枕詞
かりがね:雁、また雁の鳴き声
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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旅なれば思ひ絶えてもありつれど 家にある妹し思ひ悲しも
- 次の歌
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岩田野に宿りする君家人の いづらと我れを問はばいかに言はむ