岩田野に宿りする君家人の
いづらと我れを問はばいかに言はむ
- 歌の意味
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岩田野に仮の宿りをして眠っているあなたよ。家の人が、あの人はどこにいるのかと私に尋ねたなら、何と答えたらよいのだろう。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3689
詞書は前の歌に続き「壱岐の島に到りて、雪連宅満がたちまちに鬼病に遇ひて死去せし時に作る歌一首并せて短歌」
壱岐の岩田野に葬られた雪連宅満に呼びかけ、家の人にどこにいるのかと尋ねられたら何と答えればよいのかと嘆いた挽歌である。死を「宿りする」と旅寝になぞらえ、亡き人がまだ旅の途中にあるかのように語りかけている。帰りを待つ家族に死を伝えなければならない者のつらさが、問いのかたちで切実に表されている。
詞書によれば、一行が壱岐の島に着いた時、雪連宅満がにわかに鬼病にかかって死んだ際に作った挽歌の、長歌、本巻の第三千六百八十八首に添えられた反歌二首の一つである。鬼病は疫病のことで、当時流行した天然痘とする説がある。左注に「右三首挽歌」とあるのみで、作者の名は記されていない。
初句「岩田野に」 壱岐の島の地名で、宅満が葬られた所である。
二句「宿りする君」 「宿り」は旅先で泊まることで、死んで葬られたことを旅寝になぞらえている。ここで亡き人に呼びかけている。
三句「家人の」 「家人」は家族、家にいる人々で、宅満の帰りを待つ家族である。
四句「いづらと我れを」 「いづら」はどこの意で、どこにいるのかと私にの意である。
結句「問はばいかに言はむ」 「問はば」は仮定条件、「む」は推量で、尋ねられたら何と答えようかと結ぶ。九音の字余りで、答えに窮する思いが重く響く。
いはたの:壱岐の島の地名、宅満が葬られた所
やどり:旅先で泊まること、ここでは葬られたこと
いづら:どこ
- 出典
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万葉集
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あしひきの山飛び越ゆる雁がねは 都に行かば妹に逢ひて来ね
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世間は常かくのみと別れぬる 君にやもとな我が恋ひ行かむ