世間は常かくのみと別れぬる
君にやもとな我が恋ひ行かむ
- 歌の意味
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世の中とはいつもこのようにはかないものだと、別れていってしまったあなたを、私はどうしようもなく恋い慕いながら、旅を続けていくのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3690
詞書は前の歌に続き「壱岐の島に到りて、雪連宅満がたちまちに鬼病に遇ひて死去せし時に作る歌一首并せて短歌」
世の中はいつもこのようにはかないものだと、別れていった宅満を、自分はどうしようもなく恋い慕いながら旅を続けていくのだろうかと詠んだ挽歌である。世の無常を受け入れようとしながらも、亡き人への思いを断ち切れない心が表されている。死者を残して先へ進まなければならない旅の一行の悲しみが込められている。
詞書によれば、一行が壱岐の島に着いた時、雪連宅満がにわかに鬼病にかかって死んだ際に作った挽歌の、長歌、本巻の第三千六百八十八首に添えられた反歌二首の一つである。鬼病は疫病のことで、当時流行した天然痘とする説がある。左注に「右三首挽歌」とあるのみで、作者の名は記されていない。
初句「世間は」 「世間」は「よのなか」と読み、人の世、世の中のことである。
二句「常かくのみと」 いつもこのようにばかりあるものだとの意で、世の無常をいう。
三句「別れぬる」 「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で、別れていってしまったの意。宅満の死を指す。
四句「君にやもとな」 「や」は疑問の係助詞で結びは連体形「む」となる。「もとな」はわけもなく、どうしようもなくの意である。
結句「我が恋ひ行かむ」 「恋ひ行く」は恋い慕いながら行く意で、旅を続けながら亡き人を恋い慕うのだろうかと結ぶ。
よのなか:人の世、世間
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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岩田野に宿りする君家人の いづらと我れを問はばいかに言はむ
- 次の歌
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はしけやし妻も子どもも高々に 待つらむ君や島隠れぬる