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ひとりのみ着寝る衣の紐解かば
誰れかも結はむ家遠くして

歌の意味
独りだけで着て寝ている衣の紐を、もし解いたなら、誰が結んでくれるだろうか。家は遠く離れているのに。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3715

詞書は前の歌に続き「竹敷の浦に船泊まりする時に、おのもおのも心緒を陳べて作る歌十八首」
 独りで着て寝る衣の紐を解いたら、家が遠いので誰も結んでくれる人がいないと詠んだ歌である。衣の紐は別れの際に妻が結び、再会まで解かない約束のしるしとされた。出発の際の贈答で夫が紐を解かないと誓った本巻の第三千五百八十五首の思いを、長い旅の果てに改めてかみしめている。
 詞書によれば、竹敷の浦に船を泊めた時に、それぞれが心のうちを述べて作った十八首の一つである。竹敷の浦は対馬の浅茅湾内の浦で、現在の長崎県対馬市美津島町竹敷とされる。一連の後半の九首には左注がなく、本歌の作者の名は記されていない。

 初句「ひとりのみ」 独りだけでの意で、妻のいない独り寝を示す。
 二句「着寝る衣の」 「着寝」は着て寝る意で、独りで着て寝ている衣のの意である。
 三句「紐解かば」 「解かば」は仮定条件で、紐を解いたならばの意である。
 四句「誰れかも結はむ」 「か」は疑問の係助詞で、結びは連体形「む」となる。誰が結ぶだろうかの意で、ここで切れる四句切れである。
 結句「家遠くして」 家が遠く離れているのでの意で、四句と倒置になっている。

きぬ:着て寝る
ゆふ:結ぶ
ひも:衣を結ぶ紐、別れる男女が互いに結び合い再会まで解かないとされた
出典
万葉集
前の歌
秋されば恋しみ妹を夢にだに 久しく見むを明けにけるかも
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天雲のたゆたひ来れば九月の 黄葉の山もうつろひにけり