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旅にても喪なく早来と我妹子が
結びし紐はなれにけるかも

歌の意味
旅にあっても災いなく早く帰って来てと、いとしい妻が結んでくれた紐は、すっかり着古されてよれよれになってしまったことだ。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3717

詞書は前の歌に続き「竹敷の浦に船泊まりする時に、おのもおのも心緒を陳べて作る歌十八首」
 旅にあっても無事で早く帰ってほしいと妻が結んでくれた紐が、すっかりよれよれになってしまったと詠んだ歌である。紐の傷みに旅の長さを実感するとともに、紐に込められた妻の祈りを思い起こしている。竹敷の浦での十八首はこの歌で結ばれ、出発の贈答で交わされた衣の紐の約束が、ここで長旅の時間の重みとして示されている。
 詞書によれば、竹敷の浦に船を泊めた時に、それぞれが心のうちを述べて作った十八首の一つである。竹敷の浦は対馬の浅茅湾内の浦で、現在の長崎県対馬市美津島町竹敷とされる。一連の後半の九首には左注がなく、本歌の作者の名は記されていない。

 初句「旅にても」 旅にあってもの意である。
 二句「喪なく早来と」 「喪」は災い、凶事のこと、「来」は命令形で、災いなく早く帰って来てという妻のことばを引用している。
 三句「我妹子が」 いとしい妻がの意である。
 四句「結びし紐は」 「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、出発の際に妻が結んでくれた紐はの意である。
 結句「なれにけるかも」 「なる」は着古してよれよれになる意、「にけるかも」は完了と詠嘆で、すっかり着古されてしまったことだと結ぶ。

も:喪、災い、凶事
なる:着古してよれよれになる
ひも:衣を結ぶ紐、別れる男女が互いに結び合い再会まで解かないとされた
出典
万葉集
前の歌
天雲のたゆたひ来れば九月の 黄葉の山もうつろひにけり
次の歌
家島は名にこそありけれ海原を 我が恋ひ来つる妹もあらなくに