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家島は名にこそありけれ海原を
我が恋ひ来つる妹もあらなくに

歌の意味
家島とは名ばかりであった。海原を越えて私が恋い慕いながらやって来た妻は、ここにはいないのに。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3718

詞書「筑紫に廻り来て、海路にて京に入らむとし、播磨国の家島に到る時に作る歌五首」
 家島という名から家を思い、海原を越えて恋い慕ってきた妻がそこにはいない、家島とは名ばかりだったと嘆いた歌である。帰途に入り、ようやく故郷に近い播磨の海に戻ってきた一行の、家への思いの高まりが表されている。結句「妹もあらなくに」は、出発に臨んだ本巻の第三千五百九十二首の結句と同じであり、往路の始めと帰路の終わりとで、妻のいない嘆きが呼応している。
 詞書によれば、新羅からの帰途、筑紫を回って海路で都に入ろうとし、播磨国の家島に着いた時に作った五首の一つである。家島は現在の兵庫県姫路市の家島諸島である。一行は年を越して天平九年に帰京したが、大使阿倍継麻呂は帰途の対馬で没し、副使大伴三中も病のため帰京が遅れた。本歌の作者の名は記されていない。

 初句「家島は」 播磨国の家島で、その名に「家」を含むことが歌の趣向の中心となっている。
 二句「名にこそありけれ」 「こそ」は係助詞で、結びは已然形「けれ」となる係り結びである。名ばかりであったと気づいた詠嘆を表し、ここで切れる二句切れである。
 三句「海原を」 広々とした海を越えての意で、長い旅路を示す。
 四句「我が恋ひ来つる」 「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、私が恋い慕いながら来たの意である。
 結句「妹もあらなくに」 「なく」は打消の「ず」のク語法、「に」は詠嘆で、妻もいないのにと結ぶ。本巻の第三千五百九十二首と同じ結句である。

いへしま:播磨国の家島、名に「家」を含む
うなはら:広々とした海
出典
万葉集
前の歌
旅にても喪なく早来と我妹子が 結びし紐はなれにけるかも
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草枕旅に久しくあらめやと 妹に言ひしを年の経ぬらく