草枕旅に久しくあらめやと
妹に言ひしを年の経ぬらく
- 歌の意味
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旅にそれほど長くいることがあろうかと、妻に言ったのに、年が改まってしまったことよ。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3719
詞書は前の歌に続き「筑紫に廻り来て、海路にて京に入らむとし、播磨国の家島に到る時に作る歌五首」
旅がそれほど長くなるはずはないと妻に言ったのに、年が改まってしまったと嘆いた歌である。秋には帰ると約束して出発した一行は、年を越してようやく帰途についており、約束が果たせなかったことへの悔いが表されている。出発の際の贈答で秋の再会を約した本巻の第三千五百八十一首や第三千五百八十六首と遠く呼応する歌である。
詞書によれば、新羅からの帰途、筑紫を回って海路で都に入ろうとし、播磨国の家島に着いた時に作った五首の一つである。家島は現在の兵庫県姫路市の家島諸島である。一行は年を越して天平九年に帰京したが、大使阿倍継麻呂は帰途の対馬で没し、副使大伴三中も病のため帰京が遅れた。本歌の作者の名は記されていない。
初句「草枕」 草を結んで枕とする旅寝の意から、「旅」にかかる枕詞である。
二句「旅に久しく」 旅に長くの意である。
三句「あらめやと」 「め」は推量の「む」の已然形、「や」は反語で、長くいることがあろうか、いやないの意。出発の際に妻に言ったことばである。
四句「妹に言ひしを」 「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「を」は逆接で、妻に言ったのにの意である。
結句「年の経ぬらく」 「らく」は完了の「ぬ」のク語法で、年が過ぎてしまったことよと詠嘆して結ぶ。
くさまくら:「旅」にかかる枕詞
ふ:経る、時が過ぎる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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家島は名にこそありけれ海原を 我が恋ひ来つる妹もあらなくに
- 次の歌
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我妹子を行きて早見む淡路島 雲居に見えぬ家つくらしも