あしひきの山道越えむとする君を
心に持ちて安けくもなし
- 歌の意味
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山道を越えて遠くへ行こうとしているあなたのことを、心に抱いていて、少しも安らかな気持ちになれない。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3723
詞書「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
配流の地へ向かうために山道を越えて行こうとする宅守を思い、心が少しも安らかでないと娘子が詠んだ歌である。宅守と娘子の贈答歌群の冒頭に置かれ、これから始まる長い別れへの不安が率直なことばで表されている。巻の前半が遣新羅使の妻の別れの歌で始まったのと同じく、後半も残される女の別れの歌から始まっている。
作者の狭野弟上娘子は、宮中の蔵部に仕えた女嬬と呼ばれる下級の女官で、狭野茅上娘子とも記される。
左注に「右四首娘子臨別作歌」とあり、本巻の第三千七百二十三首から第三千七百二十六首までの四首は、宅守との別れに臨んで娘子が作った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「あしひきの」 「山」にかかる枕詞である。
二句「山道越えむと」 越前への道にある山道を越えて行こうとの意で、「む」は意志を表す。
三句「する君を」 そうしようとしているあなたをの意である。
四句「心に持ちて」 心に抱いての意で、宅守のことを片時も忘れられないさまである。
結句「安けくもなし」 「安けく」は形容詞「安し」のク語法で、安らかなこともないの意。不安で心が落ち着かないと結ぶ。
やまぢ:山道
- 作者
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狭野弟上娘子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大伴の御津の泊りに船泊てて 竜田の山をいつか越え行かむ
- 次の歌
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君が行く道の長手を繰り畳ね 焼き滅ぼさむ天の火もがも