あかねさす昼は物思ひぬばたまの
夜はすがらに音のみし泣かゆ
- 歌の意味
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昼は一日中物思いにふけり、夜は一晩中、声をあげて泣いてばかりいる。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3732
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
昼は物思いにふけり、夜は一晩中声をあげて泣いてばかりいると、昼も夜も妻を恋い慕う苦しみを詠んだ歌である。「あかねさす昼」と「ぬばたまの夜」という枕詞を伴った対句によって、明と暗、昼と夜のすべてが嘆きに覆われていることを示している。整った形式の中に、絶え間ない嘆きが表されている。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十四首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百三十一首から第三千七百四十四首までの十四首は、配流の地にあって宅守が娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「あかねさす」 茜色に照り映える意で、「昼」にかかる枕詞である。
二句「昼は物思ひ」 昼は物思いにふけっての意で、上の句と下の句が昼と夜の対句となっている。
三句「ぬばたまの」 ヒオウギの黒い実のことで、その黒さから「夜」にかかる枕詞である。初句と対をなす。
四句「夜はすがらに」 「すがら」は始めから終わりまでずっとの意で、夜は一晩中の意である。
結句「音のみし泣かゆ」 「音」は泣く声、「し」は強意、「ゆ」は自発の助動詞で、自然と声をあげて泣けてしまうと結ぶ。
あかねさす:「昼」「日」などにかかる枕詞
ね:泣く声
すがら:始めから終わりまで、ずっと
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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思ふゑに逢ふものならばしましくも 妹が目離れて我れ居らめやも
- 次の歌
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我妹子が形見の衣なかりせば 何物もてか命継がまし