- 歌の意味
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いとしい妻の形見の衣がなかったならば、いったい何によって、私は命をつないでいけるだろうか。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3733
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
妻の形見の衣がなかったら、何によって命をつないでいけるだろうかと詠んだ歌である。別れの際に娘子から贈られた衣を唯一の支えとして、配流の日々を生きている心情が表されている。形見の衣については、娘子の側でも本巻の第三千七百五十三首で、逢う日までの形見にせよと思い乱れて縫った衣だと詠んでおり、贈る者と受け取る者の思いが呼応している。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十四首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百三十一首から第三千七百四十四首までの十四首は、配流の地にあって宅守が娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「我妹子が」 いとしい妻がの意である。
二句「形見の衣」 「形見」は離れた人をしのぶよすがとなるもので、別れの際に娘子から贈られた衣を指す。
三句「なかりせば」 「せば」は結句の「まし」と呼応する反実仮想の条件で、なかったならばの意である。
四句「何物もてか」 「もて」はもちいての意、「か」は疑問の係助詞で、何によってかの意である。
結句「命継がまし」 「継ぐ」はつなぐ、保つ意、「まし」は反実仮想で、命をつないでいけようかと結ぶ。
かたみ:離れた人をしのぶよすがとなるもの
つぐ:つなぐ、保つ
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あかねさす昼は物思ひぬばたまの 夜はすがらに音のみし泣かゆ
- 次の歌
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遠き山関も越え来ぬ今さらに 逢ふべきよしのなきが寂しさ