思はずもまことあり得むやさ寝る夜の
夢にも妹が見えざらなくに
- 歌の意味
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妻のことを思わずにいることなど、本当にできるだろうか。寝る夜の夢にも、妻の現れないことはないのに。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3735
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
妻を思わずにいることなどできようか、寝る夜の夢にも妻の現れない夜はないのにと詠んだ歌である。夢に妻が現れるのは自分が妻を思うからであり、また妻が自分を思うからでもあると考えられていた。昼も夜も、夢の中までも妻への思いから逃れられないことが表されている。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十四首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百三十一首から第三千七百四十四首までの十四首は、配流の地にあって宅守が娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「思はずも」 妻のことを思わないでもの意である。
二句「まことあり得むや」 「あり得」はそのままでいることができる意、「や」は反語で、本当にいられるだろうか、いやいられないの意。八音の字余りで、ここで切れる二句切れである。
三句「さ寝る夜の」 「さ」は接頭語で、寝る夜のの意である。
四句「夢にも妹が」 「夢」は「いめ」と読む。夢にも妻がの意である。
結句「見えざらなくに」 「ざら」は打消、「なく」は打消の「ず」のク語法で、見えないことはないのにと二重の打消で強く肯定して結ぶ。
ありう:そのままでいることができる
さぬ:寝る、「さ」は接頭語
いめ:夢
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
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遠き山関も越え来ぬ今さらに 逢ふべきよしのなきが寂しさ
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遠くあれば一日一夜も思はずて あるらむものと思ほしめすな