命をし全くしあらばあり衣の
ありて後にも逢はざらめやも
- 歌の意味
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命さえ無事であるならば、このまま生きながらえて、後になってからでも、逢わないことがあろうか、きっと逢える。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3741
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
命さえ無事であるならば、生きながらえて後にでも必ず逢えると、希望を述べた歌である。前歌の神への信頼に続き、命さえあれば再会できると自らを励ましている。本文の四句には「一云 ありての後も」との注記があり、四句を「ありての後も」とする異伝を示している。注記は歌の本文から除き、ここでは本文の読みに従う。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十四首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百三十一首から第三千七百四十四首までの十四首は、配流の地にあって宅守が娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「命をし」 「し」は強意の副助詞で、命さえの意である。
二句「全くしあらば」 「全し」は無事である、欠けるところがない意で、無事であるならばの意である。
三句「あり衣の」 「あり衣」は美しい絹の衣のことで、同音の繰り返しにより四句の「あり」を導く枕詞である。
四句「ありて後にも」 生きながらえて後にもの意である。異伝では「ありての後も」となっている。
結句「逢はざらめやも」 「ざら」は打消、「め」は推量、「やも」は反語で、逢わないことがあろうか、きっと逢えると強く結ぶ。
ありきぬ:美しい絹の衣、同音で「あり」にかかる枕詞
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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天地の神なきものにあらばこそ 我が思ふ妹に逢はず死にせめ
- 次の歌
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逢はむ日をその日と知らず常闇に いづれの日まで我れ恋ひ居らむ