旅といへば言にぞやすきすくなくも
妹に恋ひつつすべなけなくに
- 歌の意味
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旅と言ってしまえば、言葉の上ではたやすい。けれども、妻を恋い慕い続けて、どうしようもない思いは少しばかりのものではないのに。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3743
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
配流の境遇を旅と言えば言葉の上ではたやすいが、妻を恋い慕ってどうしようもない思いは並大抵ではないと詠んだ歌である。人々が気軽に「旅」と呼ぶ自分の境遇が、実は配流という苦しみであることへの思いが込められている。初句と二句「旅といへば言にぞやすき」は、本巻の第三千七百六十三首にも繰り返されている。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十四首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百三十一首から第三千七百四十四首までの十四首は、配流の地にあって宅守が娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「旅といへば」 旅と言えばの意で、配流の境遇を旅と呼んでいる。
二句「言にぞやすき」 「言」はことば、「ぞ」は係助詞で、結びは連体形「やすき」となる。言葉の上ではたやすいの意で、ここで切れる二句切れである。本巻の第三千七百六十三首にも同じ初句と二句がある。
三句「すくなくも」 結句の打消と呼応して、少しばかりではなく、並々ならずの意を表す。
四句「妹に恋ひつつ」 妻を恋い慕い続けての意である。
結句「すべなけなくに」 「すべなし」はどうしようもない意、「なく」は打消のク語法で、三句と呼応し、どうしようもない思いは並々でないのにと結ぶ。
こと:言葉
すべ:方法、手段
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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逢はむ日をその日と知らず常闇に いづれの日まで我れ恋ひ居らむ
- 次の歌
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我妹子に恋ふるに我れはたまきはる 短き命も惜しけくもなし