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命あらば逢ふこともあらむ我がゆゑに
はだな思ひそ命だに経ば

歌の意味
命さえあれば、また逢うこともあるでしょう。私のために、ひどく思い悩まないでください。命さえ長らえるならば。
鑑賞
巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3745

詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
 命さえあればまた逢うこともあるだろう、私のためにひどく思い悩まないでほしいと、娘子が宅守を慰めた歌である。宅守が詠んだ本巻の第三千七百四十一首「命をし全くしあらば」や第三千七百四十四首の命も惜しくないという激しい思いを受け、命を大切にして再会を待とうと呼びかけている。初句と結句に「命」を置き、命あってこその再会であることを強調している。
 作者の狭野弟上娘子は、宮中の蔵部に仕えた女嬬と呼ばれる下級の女官で、狭野茅上娘子とも記される。
 左注に「右九首娘子」とあり、本巻の第三千七百四十五首から第三千七百五十三首までの九首は、宅守の歌に答えて娘子が贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。

 初句「命あらば」 命があるならばの意で、仮定条件である。
 二句「逢ふこともあらむ」 「む」は推量で、逢うこともあるでしょうの意。ここで切れる二句切れである。
 三句「我がゆゑに」 私のためにの意である。
 四句「はだな思ひそ」 「はだ」はひどく、甚だしくの意、「な〜そ」は禁止で、ひどく思い悩まないでくださいの意。ここで切れる四句切れである。
 結句「命だに経ば」 「だに」はさえ、「経」は生きながらえる意で、命さえ長らえるならばと、初句の「命」を繰り返して結ぶ。

ふ:経る、生きながらえる
作者
狭野弟上娘子
出典
万葉集
前の歌
我妹子に恋ふるに我れはたまきはる 短き命も惜しけくもなし
次の歌
人の植うる田は植ゑまさず今さらに 国別れして我れはいかにせむ