他国は住み悪しとぞ言ふ速けく
早帰りませ恋ひ死なぬとに
- 歌の意味
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よその国は住みにくいと言います。すみやかに、早く帰って来てください、私が恋い死にしないうちに。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3748
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
よその国は住みにくいというから、すみやかに帰って来てほしい、恋い死にしないうちにと詠んだ歌である。前歌では自分の恋しさを理由にしたが、本歌では配流の地での宅守の暮らしを案じることを理由に加え、早い帰りを重ねて願っている。前歌と同じ下の句を繰り返すことで、切実な願いが強調されている。
作者の狭野弟上娘子は、宮中の蔵部に仕えた女嬬と呼ばれる下級の女官で、狭野茅上娘子とも記される。
左注に「右九首娘子」とあり、本巻の第三千七百四十五首から第三千七百五十三首までの九首は、宅守の歌に答えて娘子が贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「他国は」 「他国」は「ひとくに」と読み、よその国、ここでは配流の地の越前を指す。
二句「住み悪しとぞ言ふ」 「ぞ」は係助詞で、結びは連体形「言ふ」となる。住みにくいと人は言うの意で、ここで切れる二句切れである。
三句「速けく」 すみやかにの意で、四句の「早」と重ねて急ぐ心を表す。
四句「早帰りませ」 早く帰ってきてくださいの意で、前歌第三千七百四十七首の四句と同じである。
結句「恋ひ死なぬとに」 恋い死にしないうちにの意で、前歌と同じ結句である。
ひとくに:よその国、他国
- 作者
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狭野弟上娘子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が宿の松の葉見つつ我れ待たむ 早帰りませ恋ひ死なぬとに
- 次の歌
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他国に君をいませていつまでか 我が恋ひ居らむ時の知らなく