白栲の我が下衣失はず
持てれ我が背子直に逢ふまでに
- 歌の意味
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私の白い下衣を、なくさずに持っていてください、あなた。じかにお逢いできるその日まで。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3751
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
自分の白い下衣をなくさずに持っていてほしい、じかに逢うその日までと、宅守に願った歌である。身につけた衣には着る人の魂がこもると考えられ、下衣を託すことは自分の身代わりとして夫のそばにいたいという思いの表れである。巻の前半で遣新羅使の妻が詠んだ本巻の第三千五百八十四首も、自分の衣を下に着てほしいと願い、同じ結句「直に逢ふまでに」で結ばれており、巻の前後半で別れる妻の心が重なっている。
作者の狭野弟上娘子は、宮中の蔵部に仕えた女嬬と呼ばれる下級の女官で、狭野茅上娘子とも記される。
左注に「右九首娘子」とあり、本巻の第三千七百四十五首から第三千七百五十三首までの九首は、宅守の歌に答えて娘子が贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「白栲の」 白い栲の布の意で、衣にかかる枕詞である。
二句「我が下衣」 「下衣」は下着、肌着のことで、娘子が身につけていた衣である。
三句「失はず」 なくさないでの意である。
四句「持てれ我が背子」 「持てれ」は持っていよの意の命令で、「我が背子」は夫への呼びかけである。ここで切れる四句切れである。
結句「直に逢ふまでに」 「直に」はじかにの意で、直接逢うその日までと期限を示して結ぶ。本巻の第三千五百八十四首の結句と同じである。
しろたへ:白い栲の布、衣などにかかる枕詞
したごろも:下着、肌着
せこ:女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語
- 作者
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狭野弟上娘子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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天地の底ひのうらに我がごとく 君に恋ふらむ人はさねあらじ
- 次の歌
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春の日のうら悲しきに後れ居て 君に恋ひつつうつしけめやも