過所なしに関飛び越ゆる霍公鳥
多我子尓毛止まず通はむ
- 歌の意味
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通行の許可証もなしに関所を飛び越えていくほととぎすよ。(四句は読みが定まらない)私も絶えることなく通っていきたいものだ。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3754
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
通行の許可証もなしに関所を自由に飛び越えていくほととぎすを詠み、自分も絶えず娘子のもとに通いたいという思いを表した歌である。関所を越えることを許されない配流の身と、自由に行き来する鳥との対比が鮮やかである。第四句の原文「多我子尓毛」は難訓で、訓読でも漢字のまま残されており、定まった読みがない。ローマ字表記では寛永版本の訓「あまたがこにも」に拠ったが、意味は明らかでない。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十三首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百五十四首から第三千七百六十六首までの十三首は、宅守が配流の地から娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「過所なしに」 「過所」は「くゎそ」と読み、関所を通行するための許可証のことで、それを持たずにの意である。
二句「関飛び越ゆる」 関所を飛び越えていくの意で、越前への道にある関を指す。
三句「霍公鳥」 「ほととぎす」と読み、夏の到来を告げる鳥で、ここでは関所を自由に越える存在として詠まれている。
四句「多我子尓毛」 難訓の句で、読みも意味も定まらない。寛永版本は「あまたがこにも」と訓む。
結句「止まず通はむ」 「む」は意志で、絶えることなく通っていこうの意である。ほととぎすのように娘子のもとへ通いたいという願いを示して結ぶ。
くゎそ:過所、関所を通行するための許可証
せき:関所
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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逢はむ日の形見にせよとたわや女の 思ひ乱れて縫へる衣ぞ
- 次の歌
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愛しと我が思ふ妹を山川を 中にへなりて安けくもなし