さ寝る夜は多くあれども物思はず
安く寝る夜はさねなきものを
- 歌の意味
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寝る夜は多くあるけれども、物思いをせずに安らかに眠れる夜は、決してないのに。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3760
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
寝る夜は多いけれども、物思いをせずに安らかに眠れる夜は決してないと詠んだ歌である。前歌の「寝る夜しぞ多き」を受け、夜の数は重なっても安らかな眠りは一夜もないと言い重ねている。「さ寝る夜」と「安く寝る夜」とを対比させ、眠れぬ夜の苦しさを強調している。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十三首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百五十四首から第三千七百六十六首までの十三首は、宅守が配流の地から娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「さ寝る夜は」 「さ」は接頭語で、寝る夜はの意である。前歌第三千七百五十九首の結句を受けている。
二句「多くあれども」 多くあるけれどもの意で、逆接で下へ転じる。
三句「物思はず」 物思いをしないでの意である。
四句「安く寝る夜は」 安らかに眠る夜はの意で、初句の「さ寝る夜」と対をなしている。
結句「さねなきものを」 「さね」は打消と呼応して決しての意、「ものを」は逆接を含む詠嘆で、決してないのにと結ぶ。
さぬ:寝る、「さ」は接頭語
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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たちかへり泣けども我れは験なみ 思ひわぶれて寝る夜しぞ多き
- 次の歌
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世の中の常のことわりかくさまに なり来にけらしすゑし種から