- 歌の意味
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山や川を間に隔てて遠く離れていても、心は近くにあるとお思いなさい、いとしい妻よ。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3764
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
山や川に隔てられて遠く離れていても、心は近くにあると思ってほしいと妻に呼びかけた歌である。物理的な距離を心の近さによって乗り越えようとし、残された妻を励ましている。二句の「山川を中にへなりて」は本巻の第三千七百五十五首と同じ表現であり、そちらで安らかでないと嘆いた隔たりを、本歌では心の近さで打ち消そうとしている。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十三首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百五十四首から第三千七百六十六首までの十三首は、宅守が配流の地から娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「山川を」 山や川をの意である。
二句「中にへなりて」 「へなる」は隔たる意で、間に隔ててと、本巻の第三千七百五十五首の三句と四句を受けた表現である。
三句「遠くとも」 「とも」は逆接の仮定で、遠く離れていてもの意である。
四句「心を近く」 心は近くにあるとの意で、三句の「遠く」と対をなしている。
結句「思ほせ我妹」 「思ほす」は「思ふ」の尊敬語でその命令形、「我妹」はいとしい妻への呼びかけで、お思いなさい、妻よと結ぶ。
へなる:隔たる、隔てる
わぎも:いとしい妻
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
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旅と言へば言にぞやすきすべもなく 苦しき旅も言にまさめやも
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まそ鏡懸けて偲へとまつり出す 形見のものを人に示すな