まそ鏡懸けて偲へとまつり出す
形見のものを人に示すな
- 歌の意味
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鏡を掛けるように心にかけて私をしのんでくださいと、差し上げる形見の品を、人には見せないでください。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3765
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
心にかけてしのんでほしいと贈る形見の品を、人には見せないでほしいと娘子に願った歌である。二人の仲は人目をはばかるものであり、形見を人に見せればうわさになることを恐れている。娘子が衣を形見として贈った本巻の第三千七百五十三首に対し、ここでは宅守の側から形見を贈っており、互いに形見を交わす関係がうかがえる。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十三首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百五十四首から第三千七百六十六首までの十三首は、宅守が配流の地から娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「まそ鏡」 「まそ鏡」はよく澄んだ鏡のことで、鏡を掛けることから二句の「懸く」にかかる枕詞である。
二句「懸けて偲へと」 「懸く」は心にかける意、「偲ふ」は慕い思う意で、心にかけてしのんでくれとの意である。
三句「まつり出す」 「まつり出す」は差し上げる意の謙譲語である。
四句「形見のものを」 離れた人をしのぶよすがとなる品をの意である。
結句「人に示すな」 「な」は禁止で、人には見せないでくださいと結ぶ。
まそかがみ:よく澄んだ鏡、「懸く」「見る」などにかかる枕詞
まつりいだす:差し上げる
しのふ:慕い思う
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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山川を中にへなりて遠くとも 心を近く思ほせ我妹
- 次の歌
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愛しと思ひし思はば下紐に 結ひつけ持ちてやまず偲はせ