愛しと思ひし思はば下紐に
結ひつけ持ちてやまず偲はせ
- 歌の意味
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いとしいと本当に思ってくださるならば、この形見を下紐に結びつけて持ち、絶えず私をしのんでください。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3766
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
いとしいと本当に思ってくれるなら、形見を下紐に結びつけて持ち、絶えずしのんでほしいと詠んだ歌である。前歌で人に見せるなと言った形見を、人目につかない下紐に結びつけて肌身離さず持っていてほしいと願っている。左注「右十三首中臣朝臣宅守」の最後の一首で、形見を託す歌によって十三首が結ばれる。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右十三首中臣朝臣宅守」とあり、本巻の第三千七百五十四首から第三千七百六十六首までの十三首は、宅守が配流の地から娘子に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「愛しと」 「愛し」は「うるはし」と読み、いとしい意である。
二句「思ひし思はば」 「し」は強意の副助詞で、本当に思ってくれるならばの意である。
三句「下紐に」 「下紐」は下着の紐で、人目につかない所である。
四句「結ひつけ持ちて」 結びつけて持っての意で、形見を肌身離さず持つことをいう。
結句「やまず偲はせ」 「偲はす」は「偲ふ」の尊敬語でその命令形で、絶えず私をしのんでくださいと結ぶ。
したびも:下着の紐
ゆひつく:結びつける
しのふ:慕い思う
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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まそ鏡懸けて偲へとまつり出す 形見のものを人に示すな
- 次の歌
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魂は朝夕にたまふれど 我が胸痛し恋の繁きに