ぬばたまの夜見し君を明くる朝
逢はずまにして今ぞ悔しき
- 歌の意味
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夜に逢ったあなたを、夜が明けた朝には逢わないままにしてしまって、今になって悔やまれる。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3769
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
夜に逢ったあなたに、夜が明けた朝には逢わないままにしてしまったことが、今になって悔やまれると詠んだ歌である。別れの前夜に逢いながら、旅立ちの朝には見送ることなく別れてしまった後悔が表されていると考えられる。取り返しのつかない別れの朝を思い返す、痛切な一首である。
作者の狭野弟上娘子は、宮中の蔵部に仕えた女嬬と呼ばれる下級の女官で、狭野茅上娘子とも記される。
左注に「右八首娘子」とあり、本巻の第三千七百六十七首から第三千七百七十四首までの八首は、娘子が宅守に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「ぬばたまの」 「夜」にかかる枕詞である。
二句「夜見し君を」 「見る」は逢う意、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、夜に逢ったあなたをの意である。
三句「明くる朝」 夜が明けた朝の意で、六音の字余りである。
四句「逢はずまにして」 「ま」はままの意で、逢わないままにしての意である。
結句「今ぞ悔しき」 「ぞ」は係助詞で、結びは連体形「悔しき」となる係り結びである。今になって悔やまれると結ぶ。
あした:朝
- 作者
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狭野弟上娘子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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このころは君を思ふとすべもなき 恋のみしつつ音のみしぞ泣く
- 次の歌
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味真野に宿れる君が帰り来む 時の迎へをいつとか待たむ