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味真野に宿れる君が帰り来む
時の迎へをいつとか待たむ

歌の意味
味真野に宿っているあなたが帰って来る、その時のお迎えを、いつのことと思って待てばよいのでしょう。
鑑賞
巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3770

詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
 味真野に宿っている宅守が帰って来る時の迎えを、いつのことと待てばよいのかと詠んだ歌である。味真野は越前国の地名で、宅守の配流の地を具体的に示している。帰りの日を迎える準備をしながらも、その日がいつ来るか知れない不安が表されている。結句「いつとか待たむ」は、巻の前半で対馬の娘子玉槻が使節の船を送って詠んだ本巻の第三千七百五首の結句と同じである。
 作者の狭野弟上娘子は、宮中の蔵部に仕えた女嬬と呼ばれる下級の女官で、狭野茅上娘子とも記される。
 左注に「右八首娘子」とあり、本巻の第三千七百六十七首から第三千七百七十四首までの八首は、娘子が宅守に贈った歌である。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。

 初句「味真野に」 越前国の地名で、現在の福井県越前市付近とされ、宅守の配流の地である。
 二句「宿れる君が」 「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、宿っているあなたがの意である。
 三句「帰り来む」 「む」は推量の連体形で、帰って来るであろうの意である。
 四句「時の迎へを」 その時の迎えをの意で、帰る人を出迎えることをいう。
 結句「いつとか待たむ」 「か」は疑問の係助詞で、結びは連体形「む」となる。いつと思って待てばよいのかと結ぶ。本巻の第三千七百五首と同じ結句である。

あぢまの:越前国の地名、宅守の配流の地
むかへ:帰る人を出迎えること
作者
狭野弟上娘子
出典
万葉集
前の歌
ぬばたまの夜見し君を明くる朝 逢はずまにして今ぞ悔しき
次の歌
宮人の安寐も寝ずて今日今日と 待つらむものを見えぬ君かも