旅にして妹に恋ふれば霍公鳥
我が住む里にこよ鳴き渡る
- 歌の意味
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旅の身で妻を恋い慕っていると、ほととぎすが、私の住む里の、ここを通って鳴きながら飛んでいく。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3783
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
旅の身で妻を恋い慕っていると、ほととぎすが自分の住む里のここを通って鳴きながら飛んでいくと詠んだ歌である。妻を恋う心と、ほととぎすの鳴き渡る声とが重なり合い、恋しさがいっそうかき立てられている。ほととぎすが都の方へ飛んでいくのであれば、思いを託したいという心もうかがえる。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌」とあり、本巻の第三千七百七十九首から第三千七百八十五首までの七首は、宅守が花や鳥に寄せて思いを述べた歌である。七首のうち六首がほととぎすを詠んでいる。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「旅にして」 旅にあっての意で、配流の境遇を指す。
二句「妹に恋ふれば」 妻を恋い慕っているとの意で、已然形に「ば」がついた確定条件である。
三句「霍公鳥」 初夏に鳴く鳥で、恋しさをかき立てる声とされた。
四句「我が住む里に」 私の住む里にの意で、前歌第三千七百八十二首の四句と同じである。
結句「こよ鳴き渡る」 「こ」はここ、「よ」は経由を表す格助詞で、ここを通って鳴きながら飛んでいくと結ぶ。
さと:人の住む所、村里
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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雨隠り物思ふ時に霍公鳥 我が住む里に来鳴き響もす
- 次の歌
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心なき鳥にぞありける霍公鳥 物思ふ時に鳴くべきものか