霍公鳥間しまし置け汝が鳴けば
我が思ふ心いたもすべなし
- 歌の意味
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ほととぎすよ、鳴く間をしばらく置いておくれ。お前が鳴くと、私の物思う心は、どうしようもなくなるから。
- 鑑賞
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巻第十五 中臣宅守狭野弟上娘子贈答歌 3785
詞書は前の歌に続き「中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子と贈答する歌」
ほととぎすに、鳴く間をしばらく置いてほしい、お前が鳴くと物思う心がどうしようもなくなるからと呼びかけた歌である。前歌で責めたほととぎすに対し、ここではせめて間を置いてほしいと控えめに願っており、恋の苦しさに耐えかねる心が表されている。巻第十五の巻末を飾る一首で、巻頭の第三千五百七十八首が水鳥の姿にたとえて別れを嘆く妻の歌であったのに対し、巻末は鳥に呼びかけて恋の苦しさを訴える夫の歌で結ばれ、巻全体が別れて暮らす夫婦の嘆きに貫かれている。
作者の中臣宅守は中臣東人の子で、神祇を司る中臣氏の出である。罪を得て越前国に配流されたが、のちに赦されて都に戻った。
左注に「右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌」とあり、本巻の第三千七百七十九首から第三千七百八十五首までの七首は、宅守が花や鳥に寄せて思いを述べた歌である。七首のうち六首がほととぎすを詠んでいる。本巻の後半には、中臣宅守と狭野弟上娘子とが交わした贈答歌六十三首が収められている。巻の目録によれば、宅守が蔵部の女嬬であった娘子を娶った時に、勅によって越前国に配流されたという。配流の地は越前国の味真野、現在の福井県越前市付近とされる。
初句「霍公鳥」 ほととぎすへの呼びかけである。巻頭の第三千五百七十八首の「洲鳥」と、巻の首尾に鳥が置かれている。
二句「間しまし置け」 「間」は時間の隔たり、「しまし」はしばらくの意で、鳴く間をしばらく置けと命じている。ここで切れる二句切れである。
三句「汝が鳴けば」 「汝」はお前の意で、お前が鳴くとの意である。
四句「我が思ふ心」 私の物思う心の意である。
結句「いたもすべなし」 「いたも」ははなはだ、「すべなし」はどうしようもない意で、まったくどうしようもないと結ぶ。
あひだ:時間の隔たり
な:汝、お前
- 作者
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中臣宅守
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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心なき鳥にぞありける霍公鳥 物思ふ時に鳴くべきものか
- 次の歌
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春さらばかざしにせむと我が思ひし 桜の花は散りにけるかも