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白髪し子らに生ひなばかくのごと
若けむ子らに罵らえかねめや

歌の意味
白髪があなたたちに生えたなら、今の私のように、若い娘たちに罵られずにすむだろうか、いや、きっと罵られることになる。
鑑賞
巻第十六 有由縁并雑歌 3793

詞書は前の歌に続き「反歌二首」
 あなたたちも白髪が生えたなら、今の私と同じように若い娘たちにからかわれることになるだろうと詠む歌である。前歌で老いの必然を説いた翁が、さらに笑う側もいつかは笑われる側になると諭している。
 竹取翁の物語は長歌の題詞に記されている。晩春に丘に登った竹取翁が、羹を煮る九人の娘子に出会い、からかわれて火を吹かされる。翁は思いがけず神仙に逢ったと詫び、長歌一首と反歌二首を作って無礼を償った。これに娘子たちが九首の歌で和している。
 作者の竹取翁は、竹を取って暮らす老人として語られる伝承上の人物である。後の『竹取物語』の竹取の翁と名が通じることから、物語の源流の一つとして注目されてきた。

 初句「白髪し」は、白髪が、の意である。「し」は強意の副助詞で、前歌の第三千七百九十二首の四句「白髪子らに」の語を受け継いでいる。
 二句「子らに生ひなば」は、あなたたちに生えたならば、の意である。前歌の「生ひずあらめやも」を受け、白髪が生えた後の姿へと話を進めている。
 三句「かくのごと」は、このように、の意で、娘たちにからかわれている今の翁自身の姿を指す。
 四句「若けむ子らに」は、若い娘たちに、の意である。「子ら」が二句と四句に重ねられ、今の若い娘と未来の若い娘とが入れ替わる反転の構図をつくっている。
 結句「罵らえかねめや」は、罵られずにすむだろうか、いや罵られる、の意である。「らえ」は受身、「かね」は「~しきれない」の意で、「や」の反語によって笑われる運命の避けがたさを言い切っている。

のる:悪口を言う、ののしる
かぬ:~しきれない、~することができない
作者
竹取翁
出典
万葉集
前の歌
死なばこそ相見ずあらめ生きてあらば 白髪子らに生ひずあらめやも
次の歌
はしきやし翁の歌におほほしき 九の子らや感けて居らむ