恥を忍び恥を黙して事もなく
物言はぬさきに我れは寄りなむ
- 歌の意味
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恥を忍び、恥をこらえて黙り、何事もなかったようにして、あれこれ言われる前に、私はお爺さんに身を寄せよう。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3795
詞書は前の歌に続き「娘子らが和ふる歌九首」
翁をからかった恥をこらえて、とやかく言われる前に自分から翁に寄り添おうと詠む歌である。恥を二度重ねる言い方に、ばつの悪さと素直に従おうとする心が表れている。
竹取翁の長歌と反歌に、からかっていた九人の娘子が次々に和えた一連である。二首目以降は結句がほぼ「我れも寄りなむ」で統一され、一人また一人と翁に心を寄せていく趣向となっている。
作者は竹取翁に出会った九人の娘子の一人で、名は伝わらない。翁から神仙と呼ばれた、物語上の人物である。
初句「恥を忍び」は、恥ずかしさをこらえて、の意である。六音の字余りで、二句の「恥を黙して」と同じ語を重ねる対句となっている。
二句「恥を黙して」は、恥をこらえて黙って、の意である。初句と同じ「恥を」を繰り返し、気まずさを強調している。
三句「事もなく」は、何事もなかったように、平然と、の意である。
四句「物言はぬさきに」は、人があれこれ言わないうちに、の意である。八音の字余りで、ためらわずに動こうとする気持ちが表れている。
結句「我れは寄りなむ」は、私は身を寄せよう、の意である。「なむ」は完了の「ぬ」と意志の「む」で、強い決意を示す。以下の歌はこの結句を「我れも寄りなむ」と受け継ぎ、一連の型を形づくっている。
もだす:黙っている、口をつぐむ
よる:心を寄せる、身を寄せて従う
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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はしきやし翁の歌におほほしき 九の子らや感けて居らむ
- 次の歌
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否も諾も欲しきまにまに許すべき 顔見ゆるかも我れも寄りなむ