住吉の岸野の榛ににほふれど
にほはぬ我れやにほひて居らむ
- 歌の意味
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住吉の岸辺の野の榛に、皆は色美しく染まるけれど、染まらずにいる私が、どうして染まらずにいられようか。私も染まろう。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3801
詞書は前の歌に続き「娘子らが和ふる歌九首」
住吉の榛で衣が美しく染まるように、仲間たちは翁に心を染めていく。自分だけが染まらずにいられようかと詠み、翁に心を寄せる歌である。「にほふ」を三度重ねた言葉遊びが特色である。
竹取翁の長歌と反歌に、からかっていた九人の娘子が次々に和えた一連である。二首目以降は結句がほぼ「我れも寄りなむ」で統一され、一人また一人と翁に心を寄せていく趣向となっている。
作者は竹取翁に出会った九人の娘子の一人で、名は伝わらない。翁から神仙と呼ばれた、物語上の人物である。
初句「住吉の」は、摂津国の住吉をいう。竹取翁の長歌に「住吉の遠里小野のま榛持ちにほほし衣に」とあり、娘子はその語句を受けて歌っている。
二句「岸野の榛に」は、岸辺の野の榛に、の意である。「榛」はハンノキで、その樹皮や実で衣を染めた。
三句「にほふれど」は、色美しく染まるけれど、の意である。仲間の娘たちが翁に心を染めていくことをたとえる。
四句「にほはぬ我れや」は、染まらない私が、の意である。係助詞「や」が結句の「む」と係り結びをつくり、反語を表す。
結句「にほひて居らむ」は、染まらずにいられようか、私も染まろう、の意である。三句、四句、結句に「にほふ」を重ね、一連の中でも特に技巧的な一首となっている。
はり:ハンノキ。樹皮や実を染料とした
にほふ:色に染まる、美しく色づく
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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はだすすき穂にはな出でそ思ひたる 心は知らゆ我れも寄りなむ
- 次の歌
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春の野の下草靡き我れも寄り にほひ寄りなむ友のまにまに