隠りのみ恋ふれば苦し山の端ゆ
出でくる月の顕さばいかに
- 歌の意味
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隠れてばかりで恋していると苦しい。山の端から出てくる月のように、二人の仲を表に出したらどうでしょう。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3803
詞書「昔者壮士と美女と有り[姓名未詳]。二親に告げずして竊かに交接をなす。時に娘子の意、親に知らしめむと欲ふ。因りて歌詠を作りてその夫に送り与ふる歌に曰く」
人目を忍んで恋し続けるのは苦しいので、山の端から月が出るように、二人の仲を明らかにしてはどうかと男に問いかける歌である。秘めた恋の苦しさから、晴れて親に認められたいと願う娘子の心が素直に表れている。
題詞によれば、親に告げずにひそかに通じていた男女があり、娘子が親に知らせたいと思ってこの歌を男に送ったという。左注には、男の答えの歌があると伝えられるが見つけられなかったとある。
作者は伝承中の娘子で、名は伝わらない。
初句「隠りのみ」は、人目を避けて隠れてばかり、の意である。「のみ」が、ひそかな恋が長く続いていることを示している。
二句「恋ふれば苦し」は、恋していると苦しい、の意で、ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「山の端ゆ」は、山の稜線から、の意である。「ゆ」は経由や起点を表す上代の格助詞である。
四句「出でくる月の」は、出てくる月のように、の意である。三句と合わせて、隠れていたものが姿を現すことのたとえとなっている。
結句「顕さばいかに」は、表に出したらどうでしょう、の意である。六音の字余りで、ためらいながら相手に問いかける口調が表れている。
やまのは:山の稜線、空と接するあたり
あらはす:隠していたことを人に知らせる、明らかにする
- 出典
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万葉集
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春の野の下草靡き我れも寄り にほひ寄りなむ友のまにまに
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かくのみにありけるものを猪名川の 沖を深めて我が思へりける