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占部をも八十の衢も占問へど
君を相見むたどき知らずも

歌の意味
占い師にも、多くの道の分かれる辻にも占いを問うてみたけれど、あなたに逢える手立てがわからないことだ。
鑑賞
巻第十六 有由縁并雑歌 3812

詞書は長歌の第三千八百十一首に続き「反歌」
 占い師にも辻占にも尋ねてみたが、あなたに逢う手立てはわからないと嘆く歌である。長歌で死を覚悟するほどの恋の苦しみを述べた娘子が、あらゆる占いに頼っても恋人に逢えない絶望を短くまとめている。
 左注によれば、車持氏の娘子は、夫が長年通って来なかったために恋い悩んで病に伏し、日に日にやせ衰えて死に臨んだ。使いをやって夫を呼び寄せたが、むせび泣きながらこの歌を口ずさみ、そのまま息絶えたという。
 作者の車持氏の娘子は、伝承中の女性で、名は伝わらない。車持氏は天皇の乗輿を管掌したとされる氏族である。

 初句「占部をも」は、占い師にも、の意である。「占部」は亀甲を焼くなどして占うことを職とした人をいう。
 二句「八十の衢も」は、多くの道の分かれる辻にも、の意である。辻に立って道行く人の言葉で吉凶を占う夕占が行われた場所である。
 三句「占問へど」は、占ってみたけれど、の意である。初句と二句の二つの占いを受け、逆接で四句以下に続ける。
 四句「君を相見む」は、あなたに逢うための、の意で、結句の「たどき」に係る。
 結句「たどき知らずも」は、手立てがわからないことだ、の意である。本巻の第三千八百五十首の結句「たづき知らずも」と同じ言い回しで、恋の嘆きと世の無常の嘆きとが同じ句で結ばれている。

うらへ:占いを職とする者
ちまた:道の分かれる所。夕方に道行く人の言葉で占う夕占が行われた
たどき:手がかり、手立て
作者
車持氏の娘子
出典
万葉集
前の歌
味飯を水に醸みなし我が待ちし かひはかつてなし直にしあらねば
次の歌
我が命は惜しくもあらずさ丹つらふ 君によりてぞ長く欲りせし