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夕づく日さすや川辺に作る屋の
形をよろしみうべ寄そりけり

歌の意味
夕日の差す川辺に建てた家の形がよいので、なるほど、人の噂に言い寄せられたわけだ。
鑑賞
巻第十六 有由縁并雑歌 3820

詞書はなく、左注に「右の歌二首、小鯛王、宴居の日に琴を取れば、登時必ずまづこの歌を吟詠す。その小鯛王は、更の名を置始多久美といふ、この人なり」とある
 夕日の差す川辺に建てた家の形が好ましいので、なるほど人々に噂されて言い寄せられたのだと詠む歌である。家の姿に美しい女性の姿を重ね、評判になるのも当然だと納得する、宴にふさわしい軽妙な歌と考えられる。
 左注によれば、小鯛王は宴の日に琴を手に取ると、必ずまずこの歌と次の歌を吟詠したという。また小鯛王は別名を置始多久美といったと記されている。
 作者の小鯛王は伝未詳の人物で、左注に別名を置始多久美というとある。置始多久美は、巻第三の題詞に名の見える置始東人の一族とも考えられている。

 初句「夕づく日」は、夕方になって傾く日、夕日の意である。前歌の第三千八百十九首の初句「夕立の」と同じく「夕」で歌い起こし、二首が夕べの景で並んでいる。
 二句「さすや川辺に」は、日の差す川辺に、の意である。「や」は語調を整える間投助詞である。
 三句「作る屋の」は、建てた家の、の意である。
 四句「形をよろしみ」は、形がよいので、の意である。「名詞+を+形容詞語幹+み」の形で原因や理由を表す。
 結句「うべ寄そりけり」は、なるほど言い寄せられたのだ、の意である。「うべ」は納得を表し、詠嘆の「けり」で結んでいる。

ゆふづくひ:夕方の日、夕日
よそる:人の噂で関係を言い寄せられる、引き寄せられる
作者
小鯛王(誦詠)
出典
万葉集
前の歌
夕立の雨うち降れば春日野の 尾花が末の白露思ほゆ
次の歌
うましものいづく飽かじをさかとらが 角のふくれにしぐひ合ひにけむ