橘の照れる長屋に我が率ねし
童女放髪に髪上げつらむか
- 歌の意味
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橘の実が照り映える長屋に私が連れて共寝した少女は、おかっぱ髪の姿から、もう髪上げをしただろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3823
詞書「決めて曰く」
前歌の古歌を、椎野連長年が論評に基づいて改めた歌である。寺の長屋を「橘の照れる長屋」とし、少女の髪型の重複を避けて助詞を改めることで、前歌の難点を正している。
前歌の左注に記された椎野連長年の論評、すなわち寺は俗人の寝る所ではないこと、少女の髪型と髪上げとを重ねて言うべきでないことを受けた改作である。歌の推敲と批評の跡を伝える資料として注目される。
作者の椎野長年は椎野連の姓を持つ人物で、伝は未詳である。
初句「橘の」は、前歌の第三千八百二十二首と同じ初句であるが、ここでは地名ではなく、橘の木の意に転じている。
二句「照れる長屋に」は、橘の実が照り映える長屋に、の意である。前歌の「寺の長屋に」を改め、寺で共寝するという不都合を避けている。
三句「我が率ねし」は、前歌と同じく、私が連れて行って共寝した、の意である。
四句「童女放髪に」は、おかっぱ髪の少女の姿に、の意である。前歌の「は」を「に」に改め、髪型の重複という指摘に応えている。
結句「髪上げつらむか」は、前歌と同じ結句で、髪を結い上げただろうか、の意である。上の句と四句の助詞だけを改めた推敲の跡が、二首を並べることで明らかになる。
うなゐはなり:髪をうなじのあたりで切りそろえた少女の髪型、またその少女
かみあぐ:成人して髪を結い上げる
- 作者
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椎野長年
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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橘の寺の長屋に我が率寝し 童女放髪は髪上げつらむか
- 次の歌
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さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の 桧橋より来む狐に浴むさむ