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からたちと茨刈り除け倉建てむ
屎遠くまれ櫛造る刀自

歌の意味
からたちといばらを刈り払って倉を建てよう。糞は遠くでしてくれ、櫛を造る刀自よ。
鑑賞
巻第十六 有由縁并雑歌 3832

詞書「忌部首の数種の物を詠む歌一首[名は忘失せり]」
 からたちや茨を刈り払って倉を建てようとするので、櫛を造る女よ、用便は遠くでしてくれと詠む歌である。からたち、茨、倉、屎、櫛といった物の名を詠み込んだ戯れの歌で、長意吉麻呂の歌八首に続いて置かれている。
 題詞には作者の名は忘れられたと注記されている。宴席で数種の物の名を即興で詠み込む遊びの歌と考えられる。
 作者の忌部首は、祭祀をつかさどった忌部氏の一員で、首の姓を持つ人物である。名は伝わらない。

 初句「からたちと」は、からたちと、の意である。とげのある木で、二句の茨と並べられている。
 二句「茨刈り除け」は、いばらを刈り払って、の意である。
 三句「倉建てむ」は、倉を建てよう、の意で、ここで句切れとなる。
 四句「屎遠くまれ」は、糞は遠くでしてくれ、の意である。本巻の第三千八百二十八首の「屎鮒」と同じく、卑俗な語をあえて詠み込んで笑いを誘っている。
 結句「櫛造る刀自」は、櫛を造る刀自よ、の意である。体言止めの呼びかけで結び、櫛という物の名を詠み込んでいる。

うばら:とげのある低木、いばら
まる:大小便をする
とじ:一家の主婦、年配の女性を敬って呼ぶ語
作者
忌部首
出典
万葉集
前の歌
池神の力士舞かも白鷺の 桙啄ひ持ちて飛び渡るらむ
次の歌
虎に乗り古屋を越えて青淵に 蛟龍捕り来む剣太刀もが