虎に乗り古屋を越えて青淵に
蛟龍捕り来む剣太刀もが
- 歌の意味
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虎に乗って古い家を飛び越え、青々とした淵にすむ蛟龍を捕らえてこられるような、剣太刀がほしいものだ。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3833
詞書「境部王の数種の物を詠む歌一首[穂積親王の子なり]」
虎に乗って古屋を越え、青い淵の蛟龍を捕らえてこられるような剣がほしいと詠む歌である。虎、古屋、淵、蛟龍、剣という勇壮な物の名を詠み込み、雄大な空想の世界を描いている。
宴席で数種の物の名を詠み込む遊びの歌で、前の忌部首の歌に続いて置かれている。前歌が卑俗な物の名で笑いを誘うのに対し、この歌は勇ましい物の名を並べている。
作者の境部王は穂積親王の子で、従四位上に至り、治部卿を務めたとされる。漢詩集『懐風藻』にも詩が収められている。
初句「虎に乗り」は、虎に乗って、の意である。日本に虎はいないため、異国の猛獣を用いた空想的な表現となっている。
二句「古屋を越えて」は、古い家を飛び越えて、の意である。
三句「青淵に」は、青々と水をたたえた深い淵に、の意である。
四句「蛟龍捕り来む」は、蛟龍を捕らえてくるような、の意である。「蛟龍」は水中にすむとされた竜に似た霊獣である。
結句「剣太刀もが」は、剣太刀がほしいものだ、の意である。「もが」は願望を表し、前歌の第三千八百三十二首の「刀自」の体言止めとは異なり、願いの形で雄大な空想を結んでいる。
みつち:水中にすむとされた竜に似た霊獣
あをふち:青々と水をたたえた深い淵
つるぎたち:両刃の剣と片刃の太刀。また鋭い刀剣
- 作者
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境部王
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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からたちと茨刈り除け倉建てむ 屎遠くまれ櫛造る刀自
- 次の歌
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梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の 後も逢はむと葵花咲く