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壇越やしかもな言ひそ里長が
課役徴らば汝も泣かむ

歌の意味
檀家の方よ、そんなふうにおっしゃいますな。里長が課役を取り立てに来たら、あなたも泣くだろう。
鑑賞
巻第十六 有由縁并雑歌 3847

詞書「法師の報ふる歌一首」
 僧をからかった檀家に向かって、そう言うな、里長が税を取り立てに来たらあなたも泣くことになると、法師がやり返す歌である。課役のない僧の立場から、税に苦しむ俗人をからかい返す機知が見どころである。
 前歌の第三千八百四十六首と戯れの贈答をなす。前歌の結句「法師は泣かむ」を受けて「汝も泣かむ」と返し、泣くのはお互いさまだと笑っている。なお三句は原文の文字に改訂を加えて「里長が」と読む説に従っている。
 作者は前歌でからかわれた法師で、名は伝わらない。

 初句「壇越や」は、檀家の方よ、の意である。寺に布施をする信者への呼びかけで、前歌の作者を指す。
 二句「しかもな言ひそ」は、そんなふうに言いなさるな、の意で、ここで句切れとなる。「な~そ」で禁止を表す。
 三句「里長が」は、里の長が、の意である。律令制の下で、里長は租税や労役の取り立てを担った。
 四句「課役徴らば」は、課役を取り立てたならば、の意である。僧は課役を免除されていたので、俗人の弱みを突いている。
 結句「汝も泣かむ」は、あなたも泣くだろう、の意である。前歌の結句「法師は泣かむ」と対をなし、泣く者を法師から檀家へと反転させて切り返している。

だにをち:寺に布施をする信者、檀家
えだち:朝廷が課した労役や租税
はたる:取り立てる、催促する
さとをさ:里の長。租税や労役の取り立てを担った
出典
万葉集
前の歌
法師らが鬚の剃り杭馬繋 いたくな引きそ法師は泣かむ
次の歌
あらき田の鹿猪田の稲を倉に上げて あなひねひねし我が恋ふらくは