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生き死にの二つの海を厭はしみ
潮干の山を偲ひつるかも

歌の意味
生と死という二つの海を厭わしく思うので、潮の干いた山を慕い求めてきたことだ。
鑑賞
巻第十六 有由縁并雑歌 3849

詞書「世間の無常を厭ふ歌二首」
 生と死を繰り返す迷いの世界を二つの海にたとえ、それを厭うて、潮の干いた山すなわち悟りの境地を慕い求めると詠む歌である。仏教の教えを和歌に詠み込んだ、万葉集の中でも珍しい思想的な一首である。
 左注によれば、この二首は河原寺の仏堂の中に置かれた倭琴の面に書かれていたという。河原寺は大和国飛鳥にあった寺で、川原寺とも書く。
 作者は伝わらない。

 初句「生き死にの」は、生と死の、の意で、仏教でいう生死、すなわち迷いの世界の輪廻をいう。
 二句「二つの海を」は、生と死という二つの海を、の意である。迷いの世界を果てしない海にたとえている。
 三句「厭はしみ」は、厭わしく思うので、の意である。形容詞の語幹に「み」が付き、原因や理由を表す。
 四句「潮干の山を」は、潮の干いた山を、の意である。生死の海を超えた悟りの境地をたとえ、須弥山を指すとする説もある。
 結句「偲ひつるかも」は、慕い求めてきたことだ、の意である。完了の「つ」と詠嘆の「かも」で、悟りへの思いを静かに結んでいる。

しほひのやま:潮の干いた山。生死の海を超えた悟りの境地をたとえるとされる
いとふ:嫌って避ける
出典
万葉集
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あらき田の鹿猪田の稲を倉に上げて あなひねひねし我が恋ふらくは
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世間の繁き仮廬に住み住みて 至らむ国のたづき知らずも