石麻呂に我れ物申す夏痩せに
よしといふものぞ鰻捕り食せ
- 歌の意味
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石麻呂に私は申し上げる。夏痩せによいというものですよ、鰻を捕って召し上がれ。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3853
詞書「痩せたる人を嗤咲ふ歌二首」
ひどく痩せた石麻呂に、夏痩せによいという鰻を捕って食べなさいと勧める歌である。親しい友を気遣うふりをしながら、その痩せぶりをからかっている。夏に鰻を食べる習慣の古い例として、よく引かれる一首である。
左注によれば、吉田連老、字を石麻呂という人がいた。いわゆる仁敬の子である。この老は体がひどく痩せていて、いくら飲み食いしても飢えた人のような姿であった。そこで大伴宿禰家持が、いささかこの歌を作って戯れ笑ったという。なお訓読の末尾には「賣世の反なり」という読み方の注記があり、歌の本文ではないので除いた。
作者の大伴家持は大伴旅人の子で、越中守などを歴任し、従三位中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている。
初句「石麻呂に」は、吉田老の字である石麻呂に、の意である。親しみを込めて字で呼びかけている。
二句「我れ物申す」は、私は申し上げる、の意で、ここで句切れとなる。改まった言い方で、かえっておかしみを出している。
三句「夏痩せに」は、夏の暑さで痩せることに、の意である。
四句「よしといふものぞ」は、よいというものですよ、の意である。係助詞「ぞ」で強く念を押している。
結句「鰻捕り食せ」は、鰻を捕って召し上がれ、の意である。「食す」は「食ふ」の尊敬語で、敬語を用いながらからかっている。次歌の第三千八百五十四首も鰻を詠み、二首が一組となっている。
むなぎ:ウナギの古名
めす:召し上がる
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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心をし無何有の郷に置きてあらば 藐孤射の山を見まく近けむ
- 次の歌
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痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた 鰻を捕ると川に流るな