志賀の山いたくな伐りそ荒雄らが
よすかの山と見つつ偲はむ
- 歌の意味
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志賀の山の木をひどく伐らないでくれ。荒雄のよすがの山として、見ながら偲ぼう。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3862
詞書は前の歌に続き「筑前国の志賀の白水郎の歌十首」
志賀の山の木を伐らないでくれ、荒雄をしのぶよすがの山として見ながら偲ぼうと詠む歌である。亡骸も帰らない夫を思う手がかりとして、ふるさとの山を大切にしたいという妻の願いが込められている。
左注によれば、神亀年間に大宰府が筑前国宗像郡の宗形部津麻呂を対馬へ食糧を送る船の舵取りに任じた。老いて海路に耐えられない津麻呂は、志賀村の海人荒雄に交代を頼み、荒雄は兄弟より篤い友情から快く引き受けた。荒雄は肥前国松浦の美祢良久の崎から対馬へ船出したが、たちまち空が暗くなり暴風雨となって、海中に沈んでしまった。残された妻子が慕う思いに耐えかねてこの歌を作ったとも、筑前守山上憶良が妻子の悲しみを思いやって作ったともいう。
作者は左注に一説として示される山上憶良で、遣唐使に随行して唐に渡り、筑前守を務めた。人生の苦しみや家族への情を詠んだ歌で知られる。歌は荒雄の妻子の立場で詠まれている。
初句「志賀の山」は、筑前国の志賀島の山をいう。荒雄のふるさとの山である。
二句「いたくな伐りそ」は、ひどく伐らないでくれ、の意で、ここで句切れとなる。「な~そ」で禁止を表す。
三句「荒雄らが」は、荒雄の、の意である。
四句「よすかの山と」は、よすがとなる山として、の意である。亡骸のない夫をしのぶ手がかりを、山に求めている。
結句「見つつ偲はむ」は、見ながら偲ぼう、の意である。意志の「む」で、これからも山を見て夫を思い続ける決意を示している。
よすか:心を寄せるよりどころ、ゆかり
- 作者
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山上憶良(一説)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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荒雄らを来むか来じかと飯盛りて 門に出で立ち待てど来まさず
- 次の歌
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荒雄らが行きにし日より志賀の海人の 大浦田沼は寂しくもあるか