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射ゆ鹿を認ぐ川辺のにこ草の
身の若かへにさ寝し子らはも

歌の意味
射られた鹿の跡をたどる川辺の柔らかな草のように、身の若かった頃に共寝したあの子は、今はどうしているだろう。
鑑賞
巻第十六 有由縁并雑歌 3874

詞書はなく、左注に「右の歌一首」とある
 若い頃に共寝した娘を、今はどうしているだろうかと懐かしく思い出す歌である。射られた鹿を追う川辺の柔らかい草という狩りの情景を序として、若き日の恋を回想している。
 左注には「右の歌一首」とあるのみで、作者や由来は伝わらない。
 作者は伝わらない。

 初句「射ゆ鹿を」は、射られた鹿を、の意である。「射ゆ」は「射る」に受身の「ゆ」が付いた形である。
 二句「認ぐ川辺の」は、足跡をたどって追う川辺の、の意である。
 三句「にこ草の」は、柔らかな草の、の意である。初句から三句までが、四句の「若かへ」を導く序詞となっている。
 四句「身の若かへに」は、身の若かった頃に、の意である。柔らかな若草の序から、若い日の自分へと転じている。
 結句「さ寝し子らはも」は、共寝したあの子は、今はどうしているだろう、の意である。「はも」は回想の詠嘆を表し、過ぎ去った恋人への懐かしさで結んでいる。

つなぐ:足跡をたどって追う
にこぐさ:柔らかな草
わかかへ:若かった頃
出典
万葉集
前の歌
我が門に千鳥しば鳴く起きよ起きよ 我が一夜夫人に知らゆな
次の歌
豊国の企救の池なる菱の末を 摘むとや妹がみ袖濡れけむ