豊国の企救の池なる菱の末を
摘むとや妹がみ袖濡れけむ
- 歌の意味
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豊国の企救の池にある菱の実を摘もうとして、あの娘は袖を濡らしたのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3876
詞書「豊前国の白水郎の歌一首」
企救の池で菱の実を摘もうとして、あの娘は袖を濡らしたのだろうかと思いやる歌である。水辺で働く娘の姿を、いとしむように描いた労働の歌であり、民謡として歌われたものと考えられる。
豊前国の海人の歌として伝わり、次歌の第三千八百七十七首の豊後国の海人の歌と、豊前と豊後で一組をなしている。企救は現在の福岡県北九州市の辺りである。
作者は豊前国の海人で、名は伝わらない。
初句「豊国の」は、豊前と豊後を合わせた古い国名である。次歌の作者の豊後国とも通じる。
二句「企救の池なる」は、企救の池にある、の意である。
三句「菱の末を」は、菱の実を、の意である。「末」は先端の意で、菱の実を指すとされる。六音の字余りである。
四句「摘むとや妹が」は、摘もうとして、あの娘が、の意である。係助詞「や」が結句の「けむ」と係り結びをつくる。
結句「み袖濡れけむ」は、袖を濡らしたのだろうか、の意である。過去推量の「けむ」で、その場にいない娘の姿を思いやっている。
ひし:池や沼に生える水草で、実を食用とした
うれ:草木の先端
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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射ゆ鹿を認ぐ川辺のにこ草の 身の若かへにさ寝し子らはも
- 次の歌
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紅に染めてし衣雨降りて にほひはすともうつろはめやも