弥彦おのれ神さび青雲の
たなびく日すら小雨そほ降る
- 歌の意味
-
弥彦の山は、おのずから神々しくて、青雲のたなびく晴れた日でさえ、小雨がしとしとと降っている。
- 鑑賞
-
巻第十六 有由縁并雑歌 3883
詞書は前の歌に続き「越中国の歌四首」
弥彦の山は神々しく、晴れて青雲のたなびく日でさえ小雨がしとしと降っていると、その神秘的な姿をたたえる歌である。山に雨雲のかかる景を、神の山の威厳として捉えている。
越中国の歌四首の一首で、弥彦は越後国の弥彦山を指す。当時は越中国の範囲が現在の新潟県の一部に及んでいたため、越中国の歌とされたと考えられる。なお訓読の末尾には「一に云ふ、あなに神さび」という異伝の注記があり、歌の本文ではないので除いた。
作者は伝わらない。
初句「弥彦」は、越後国の弥彦山をいい、弥彦神社の神体山である。四音の字足らずで、山の名を呼びかけるように歌い起こしている。
二句「おのれ神さび」は、おのずから神々しくて、の意である。異伝では「あなに神さび」とある。
三句「青雲の」は、青雲の、の意で、晴れた空にたなびく雲をいう。
四句「たなびく日すら」は、たなびく晴れた日でさえ、の意である。「すら」は、晴れた日でさえ、という意外さを表す。
結句「小雨そほ降る」は、小雨がしとしとと降る、の意である。晴れの日にも雨の降る山の不思議を、神の山の威厳として結んでいる。
いやひこ:越後国の弥彦山。弥彦神社の神体山
かむさぶ:神々しく振る舞う、神らしくある
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
大野道は茂道茂路茂くとも 君し通はば道は広けむ
- 次の歌
-
天にあるやささらの小野に茅草刈り 草刈りばかに鶉を立つも