沖つ国うしはく君の塗り屋形
丹塗りの屋形神の門渡る
- 歌の意味
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沖の彼方の国を治める君の塗り屋形、赤く塗った屋形の船が、神の海峡を渡っていく。
- 鑑賞
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巻第十六 有由縁并雑歌 3888
詞書は前の歌に続き「怕ろしき物の歌三首」
沖の彼方の国を治める君の、赤く塗った屋形の船が、神の支配する海峡を渡っていくと詠む歌である。沖の国は死者の国、黄泉の国を指すとも考えられ、霊を運ぶ船の不気味な姿を描いている。
「怕ろしき物の歌」三首は、天上の野、沖の彼方の国、人魂と、この世ならぬ世界の恐ろしさを詠んだ一連で、巻第十六の巻末に置かれている。宴席で座の者を怖がらせるために誦された歌とも考えられる。
作者は伝わらない。
初句「沖つ国」は、沖の彼方の国、の意である。海の彼方にあるとされた死者の国を指すと解される。
二句「うしはく君の」は、支配する君の、の意である。異界の主を指している。
三句「塗り屋形」は、塗った屋形、の意である。船の上に設けた屋根つきの部屋をいう。
四句「丹塗りの屋形」は、赤く塗った屋形、の意である。三句の「屋形」を重ね、赤い色を加えて印象を強めている。
結句「神の門渡る」は、神の支配する海峡を渡っていく、の意である。前歌の第三千八百八十七首が天上の野を詠んだのに対し、ここでは海の彼方の国を詠み、天と海という異界の上下の対をなしている。
うしはく:支配する、領有する
かみのと:神の支配する海峡
やかた:船の上に設けた屋根つきの部屋
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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天にあるやささらの小野に茅草刈り 草刈りばかに鶉を立つも
- 次の歌
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人魂のさ青なる君がただひとり 逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ