大船の上にし居れば天雲の
たどきも知らず歌ひこそ我が背
- 歌の意味
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大きな船の上にいるので、空の雲のように頼るすべもわからない。歌ってほしい、あなた。
- 鑑賞
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巻第十七 3898
詞書は前の歌に続き「天平二年庚午冬十一月、大宰帥大伴卿、大納言に任ぜられ(帥を兼ぬること旧のごとし)京に上る時に、傔従等、別に海路を取りて京に入る。ここに羇旅を悲傷し、各所心を陳べて作る歌十首」
大船の上にいると空の雲のようにどうしてよいかわからない、だから歌を歌ってほしい、と同船の男に呼びかけた歌である。天平二年(730)、大宰帥大伴旅人が大納言に任じられて帰京した際、従者たちは陸路の旅人とは別に海路で都へ向かい、その旅の悲しみを十首に詠んだ。結句で「我が背」と呼びかけていることから、女性の立場で詠まれた歌と見られ、船中の心細さを歌によって慰めようとする場面がうかがえる。
作者は左注に姓名不詳とあり、旅人に従って海路を上った傔従の一人である。
初句「大船の」は大きな船の意で、官人の一行を乗せた船を指す。
二句「上にし居れば」の「し」は強意の副助詞で、船の上にいるので、と理由を示す確定条件である。
三句「天雲の」は空の雲のように漂って定まらない意で、「たどき」にかかる枕詞的な修飾である。
四句「たどきも知らず」の「たどき」は手がかり、頼るすべの意で、どうしてよいかわからない心細さを表す。ここで句切れとなる。
結句「歌ひこそ我が背」の「こそ」は他に対する願望を表す終助詞で、歌ってください、の意である。字余り(八音)で、「我が背」という呼びかけが一首を女性の声として印象づけている。
たどき:手がかり。頼るすべ
せ:女性から夫や恋人など親しい男性を呼ぶ語
- 出典
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万葉集
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大海の奥かも知らず行く我れを いつ来まさむと問ひし子らはも
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