- 歌の意味
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織女が今、舟に乗って天の川を渡ろうとしているらしい。澄んだ月夜に雲が一面に立ちわたっている。
- 鑑賞
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巻第十七 3900
詞書「十年七月七日の夜に、独り天漢を仰ぎて聊かに懐を述ぶる一首」
澄んだ月夜に雲が立ちわたるのを見て、織女が今まさに舟に乗って天の川を渡るらしい、と七夕の夜空を想像した歌である。詞書によれば、天平十年(738)七月七日の夜、作者がひとり天の川を仰いで思いを述べたものである。万葉集の七夕歌では彦星が天の川を渡るとする歌が多いが、本歌は中国の伝承に従い、織女が舟で渡るさまを思い描いている。月夜の雲の動きに天上の恋の出来事を読み取る、若き日の家持の繊細な感覚がうかがえる一首である。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「右の一首は大伴宿祢家持の作」とある。
初句「織女し」の織女は織女星、またそれを人格化した女神で、「し」は強意の副助詞である。
二句「舟乗りすらし」は、舟に乗るらしい、の意である。「らし」は根拠に基づく推定の助動詞で、その根拠は下の句の「雲立ちわたる」に示される。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「まそ鏡」は、よく澄んだ鏡の意から「清き」にかかる枕詞である。
四句「清き月夜に」は、澄んだ月の夜に、の意である。七日の夜の月は上弦の月で、宵の空に清らかにかかる。
結句「雲立ちわたる」は雲が一面に立ち広がる意である。推定の根拠を後から示す倒置的な構成で、雲を天の川の船出の気配として描いている。
たなばた:織女星。またそれを人格化した女神
まそかがみ:清き、見るなどにかかる枕詞
つくよ:月夜。月の出ている夜
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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海人娘子漁り焚く火のおぼほしく 角の松原思ほゆるかも
- 次の歌
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み冬継ぎ春は来たれど梅の花 君にしあらねば招く人もなし