あしひきの山辺に居れば霍公鳥
木の間立ち潜き鳴かぬ日はなし
- 歌の意味
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山のほとりに住んでいるので、霍公鳥が木の間を飛びくぐって鳴かない日はない。
- 鑑賞
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巻第十七 3911
詞書「橙橘初めて咲き、霍公鳥飜り嚶く。この時候に対ひて、なにそ志を暢べざらむ。よりて三首の短歌を作りて、もちて鬱結の緒を散らさまくのみ」
山に近い所に住んでいるので、霍公鳥が木々の間をくぐり飛んで鳴かない日はない、と恭仁京での日々を述べた歌である。天平十三年(741)四月三日、新都恭仁京で内舎人として仕えていた家持が、奈良の旧宅から霍公鳥の歌を贈ってきた弟書持(本巻の第三千九百九首と第三千九百十首)に答えた三首の一つである。弟が「聞かぬ日なけむ」と願ったことに対し、こちらではすでに毎日鳴いていると答え、山あいの新都の初夏の風情を伝えている。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「右、四月三日に内舎人大伴宿祢家持、久邇京より弟書持に報へ送る」とある。
初句「あしひきの」は山にかかる枕詞である。
二句「山辺に居れば」は、山のほとりにいるので、の意で、山に囲まれた恭仁京の地を表している。
三句「霍公鳥」は弟の歌の主題を受けて置かれた句である。
四句「木の間立ち潜き」の「立ち潜く」は木々の間をくぐり抜けて飛ぶ意で、霍公鳥の動きを生き生きと描いている。
結句「鳴かぬ日はなし」は、鳴かない日はない、の意である。弟書持の第三千九百九首の結句「聞かぬ日なけむ」に対応し、仮定で願われたことを現実のこととして答える贈答の妙を見せている。
あしひきの:山にかかる枕詞
たちくく:木々の間をくぐり抜けて飛ぶ
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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玉に貫く楝を家に植ゑたらば 山霍公鳥離れず来むかも
- 次の歌
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霍公鳥何の心ぞ橘の 玉貫く月し来鳴き響むる