かきつばた衣に摺り付け大夫の
着襲ひ猟する月は来にけり
- 歌の意味
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かきつばたの花を衣に摺りつけて染め、ますらおたちが着飾って薬猟をする月がやって来たことだ。
- 鑑賞
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巻第十七 3921
詞書は前の歌に続き「十六年四月五日に、独り平城の故宅に居て作る歌六首」
かきつばたの花で衣を摺り染め、ますらおたちが着飾って狩りに出る月がやって来た、と季節の行事を待つ心を詠んだ歌である。天平十六年(744)四月五日、都が恭仁京から難波宮へと移り、旧都となった平城京の旧宅に家持がひとり住んで詠んだ六首の一つである。五月五日の薬猟は宮廷の華やかな行事であり、四月五日の作であることから、旧都にひとり住みながらその季節の到来を感じ取っている。六首の結びにあたる。
作者の大伴家持は大納言大伴旅人の子である。天平十八年(746)に越中守となって五年を越中で過ごし、のちに少納言、因幡守などを歴任して中納言に至った。万葉集の編纂に深く関わったと考えられている人物である。
左注に「右の六首の歌は、天平十六年四月五日に、独り平城の故郷の旧宅に居りて大伴宿祢家持作る」とある。
初句「かきつばた」はアヤメ科の植物で、初夏に紫の花を咲かせる。
二句「衣に摺り付け」は、花を衣に摺りつけて色を染めることで、摺り染めの技法を表している。
三句「大夫の」は宮廷に仕える立派な男子のことである。
四句「着襲ひ猟する」の「着襲ふ」は衣を重ねて着飾る意、「猟」は五月五日に行われた薬猟で、鹿の若角や薬草を採る宮廷行事である。
結句「月は来にけり」の「来にけり」は、やって来たことだ、という気づきの詠嘆である。六首を通じて詠まれた橘や霍公鳥の初夏の景を、行事の季節の到来で締めくくっている。
すりつく:花や草の汁を衣に摺りつけて染める
きそふ:衣を重ねて着飾る
かり:ここでは五月五日に行われた薬猟
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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鶉鳴く古しと人は思へれど 花橘のにほふこの宿
- 次の歌
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降る雪の白髪までに大君に 仕へまつれば貴くもあるか