古典和歌stream

道の中国つみ神は旅行きも
し知らぬ君を恵みたまはな

歌の意味
越中の国の神様は、旅に慣れていないあなたを、どうか恵み守ってほしい。
鑑賞
巻第十七 3930

詞書は前の歌に続き「更に越中国に贈る歌二首」
 越中の国の神は、旅に慣れていないあなたをどうか守り恵んでほしい、と任地の神に家持の加護を祈った歌である。家持が越中に下った後、坂上郎女が重ねて越中へ贈った二首の一つである。都で育ち遠い旅に不慣れな家持の身を案じ、土地の神に呼びかけて加護を願っている。
 作者の大伴坂上郎女は大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹にあたる。家持の叔母であり、娘の坂上大嬢が家持の妻となったので姑でもある。

 初句「道の中」は越の国の中、すなわち越中を指す。越の国は道の口(越前)、道の中(越中)、道の後(越後)に分けられた。
 二句「国つみ神は」は、その国の土地の神は、の意で、「み」は尊敬の接頭語である。
 三句「旅行きも」は旅をすることも、の意である。
 四句「し知らぬ君を」の「し」は強意の副助詞で、旅をし慣れていないあなたを、の意である。
 結句「恵みたまはな」の「な」は他に対する願望を表す終助詞で、お恵みくださいませ、と祈っている。第三千九百二十七首の斎瓮を据える祈りと呼応し、坂上郎女の四首は家持の無事を祈る心で結ばれている。

みちのなか:越中の国の古称
くにつかみ:その土地を治める神
作者
大伴坂上郎女
出典
万葉集
前の歌
旅に去にし君しも継ぎて夢に見ゆ 我が片恋の繁ければかも
次の歌
君により我が名はすでに龍田山 絶えたる恋の繁きころかも